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東京のカメラマンから離島のホテル経営者へ。家業を継ぐためにUターン。

『実家がなくなるのは嫌だから、島に戻ってきた』
大変な仕事とわかっていても、島に戻って家業を継いだ理由とは?

「Humans of Nishinoshima」
島根県、隠岐諸島の小さな島「西ノ島」で暮らす人のインタビュー記事。
島の人ってどんな暮らしをしているの?どんな仕事をしているの?
そんな島暮らしの日常をお伝えしています。

今回お話を伺ったのは、西ノ島のホテル『国賀荘』を経営されている升谷圭吾さん。
家業を継いで感じたことや島での暮らしについて伺いました。


島を出て東京へ

隠岐の島前高校を卒業したあと島を出て、東京の専門学校で写真の勉強をしました。

写真は高校生のころから興味があったんですよね。
報道カメラマンの『マグナム・フォト』っていう写真家集団が好きで。
例えば、戦場の写真とか、社会問題になっている地域の人を取り上げた写真とか、そういう硬派な感じの写真に惹かれたのが、恐らくきっかけです。

専門学校を卒業したあとは、スタジオカメラマンとして商品の撮影をする会社に就職しました。
ショップのコスメやアクセサリーなど、ECサイトに載せるような写真を撮る仕事でした。

今でも趣味は写真と答えるくらい好きですが、7年間勤めて、退職しました。

そして、2013年に家業を継ぐために島に戻ってきました。

実家が『国賀荘』っていうホテルを経営していて。
父親は自分が高校生のときに他界したので、そのあとは母親と祖父母で経営していました。

姉もいるんですけど、結婚して島に戻ってくる予定がなくて。
母親も高齢でしたし、長男だからやっぱり継がないといけないのかもしれないって思って渋々(笑)

ホテル業って本当に大変なんです。
両親がずっと仕事をしていて忙しいのを見ていたから、正直憧れとかもなくて。
小さい頃は、両親と遊ぼうと思っても、忙しくて遊べないことも多かったし。
特に姉は誕生日も仕事で祝ってもらえなかったから、すごく嫌だったみたいですね(笑)

でも、やっぱり実家がなくなるのは嫌じゃないですか。
実家がたまたまホテルだったというだけなので。
だから、大変なのはわかっていたけど、継ぐことにしました。

父親から受け継いだもの

国賀荘は僕の代になってから7年目になります。
創業自体は42年目くらいですかね。
もともと西ノ島町が運営してたものを父親が購入し、始まったそうです。

父親はエンジニアとして働いていたんですけど、どうしてホテル業を始めたのか、実はよく知らないんです。
小学生のときにホテルを購入した理由を聞いたら、「大きい家に住みたくて、半分くらい自室にしようと思った」って(笑)

僕は父親のことをだいぶ変わった人だと思ってましたけど、周りの人からは「先見の明があって、勢いのある人」ってよく言われていました。

昔は毎日のように団体旅行客が100人くらい来ていたみたいです。
大きな民宿みたいに、パートの方たちがお刺身切ったり、天ぷら揚げたりして、100人前の料理を作ってたそうです。

僕もそこまでたくさん来ていたなんて知らなかったけど、お客さんが20人くらいしかいない日は、「なんで今日少ないんだろう」って思ったくらいです。

継いでから感じたこと

実際にホテル業の経営をしてみて思ったのは、掃除ってこんなに大変なんだっていうこと。
今稼働しているのが20部屋あるんですけど、すごく時間がかかる。
そこが一番衝撃でしたね。

それに、とにかく朝昼晩ずっと仕事があるんです。

今日も朝5時に起きて、朝食の準備をして配膳して。
7時半頃からチェックアウトの10時頃までフロント業務。
そのあとお客様を港まで送迎して、1時間半くらい草刈りをしていました。
15時くらいからチェックインが始まって、夜21時まで仕事です。

こんな感じでずっとホテルにいないといけないのは大変ですね。

でも、やっぱりお客様に「ありがとう」とか「良かったよ」って言われると、やっていて良かったなって思います。
そこはサービス業の一番いいところかなって思いますね。

休みは家族との時間

ホテルから出られないことが多いけど、仕事の合間に休みが作れたら、家族で出かけます。
公園に行ったり、図書館に行ったり、カフェに行ったり。
月に4回ほどしか出かけられないので、4歳の娘がやりたいことをするようにしています。

妻もホテルの仕事を手伝ってくれてますが、娘がなるべく寂しくならないように、仕事の時間は調整しています。
自分が小さい頃、起きたら隣に母親がいないとストレスだったので、娘が寝るときは一緒にいてもらったり、土日はお休みにしていたり。

島で子育てをしていると、みんなが気にかけてくれるのでありがたいですね。
大体知っている人たちばかりの中で暮らすのは親としても安心です。

習い事とかは都会ほど選択肢がないので、娘がやりたいものが島になかったらどうしようっていうのは気がかりですけど。
それ以上に安心して子育てできることの方が自分にとっては大事かなと思います。

島について思うこと

この島の人は、外から来た人を受け入れてくれると思います。
僕もこの島に戻ってきたとき、すぐに島の人と仲良くなれたのでびっくりしました。
もともと僕のことを知ってくれている人が多かったっていうのはあるかもしれないけど、誰でもすぐに馴染めると思います。

島留学で1年間来てくれる子は、よく来てくれたなって思います。
1年もいてくれるの?って(笑)
漁師の友達も、島留学生とか外の人が来てくれるのすごくいいねって言ってましたよ。
自分は全然関わりないけど、活気があっていいねって。

観光業としては、インフラ整備とかまだまだ工夫が必要な部分もありますね。
例えば、観光地を回る手段はタクシーかレンタカーしかない。
レンタサイクルもあるけど乗れない人もいるし、レンタカーは台数が限られてる。

自分の宿も含め、これから観光客を受け入れる体制をもっと整えて、色んなところから人が来てくれるようになると嬉しいですね。

▼国賀荘HP


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