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幼い頃から海と釣りが大好き。なるつもりはなかったけれど、島で漁師になりました。

「Humans of Nishinoshima」
島に住んでいる人って何してるの?島にはどんな仕事があるの?
このマガジンでは西ノ島で暮らす人にインタビューし、
イメージしづらい離島での暮らしについてお届けしています。

島根県内でも隠岐は屈指の漁業のまちで、令和3年の隠岐地域の漁獲量は約6.7万トン(県内75%)と、島根県の水産業の根幹を支えています。(※隠岐支庁農林水産局資料より)

そして今回お話を伺ったのは、西ノ島でまき網漁を行う「株式会社一丸」の漁師、福島かいさんです。

福島さん 取材当時32歳
3人の男の子のお父さんでもあります。

漁師という仕事の大変さや、生まれ育った西ノ島での暮らし、島への思いなどをお伺いしました。


漁師になるつもりはありませんでした

一度島外に出たんですが、ずっと西ノ島にいます。

高校卒業後、海上自衛隊に入る予定だったんですけど、膝の怪我があり入隊直前になって入れないというのが分かって。
企業で1年ほど松江で働いて、西ノ島に帰ってきました。
かれこれ島に帰ってきて12年になります。

帰ってきてから5年ほどはパチンコ屋さんで働いていたんですが、
3人目の子どもが生まれそうな時に、「漁師になろう」と思いました。

元々漁師になるつもりはなかったんです。
父親が「一丸」で船長をやっていて、漁師の家がどういうものか分かっていたので、なるべく漁師にはなりたくないなと思っていて。

でも島で生活するにあたって一番やりやすかったというのもあり漁師になりました。
他の人と同じようにまず仕事を体験して、仕事内容を理解したうえで入社しました。

まき網船団での仕事

うちは「船団」なので一隻で仕事をすることはありません。
本船」という網を積んだ船と、獲った魚を運ぶ「運搬船」と、魚を集める「灯船(ひぶね)」という3種類の船があります。

(※まき網漁の技法について詳しくはこちらから↓↓)

日の入から日の出までが拘束時間で、魚が集まって来た所を網で囲い、その中の魚を運搬船に載せるっていうのを多くて1日3~4回、少なければ1回行います。
出港したはいいけど何もせず帰る日もあります。

拘束時間は長いですけど、実働時間はそれより短いです。
夏と冬でも違いますしね。
冬は夜が長いので16時くらいに出て帰ってきたら10時とか。
夏は18時半とかに出て7時に帰ってきたり。

冬は特に海が時化て、何日も漁に出られない日が続くこともあります。
雨や雪は関係なくて、とにかく海が時化なければ漁に出ます。
あと土曜日は休みです。

土曜日以外の休みが分かるのはその日の朝とかですね。
職場に行ってから「今日は休みにする」と言われることもあります。

自分はいま「本船」に乗っています。
父親が本船の船長で漁労長なので、それを習えと言われています。
ただ人数が少ないのであまり習えてはいなくて、皆と同じように仕事をしていることが多いです。

本船は新人とベテランが混ざっていますが、島外から来た人は基本的に本船に乗ってもらっています。
運搬船と灯船はあまり人を入れ替えたくない船なので、地元の人や移住してきて家庭を持っている人が多いです。

ちなみに運搬船は漁場と境港を往復するので、基本的に島には1週間帰って来れないんです。


漁師の仕事の面白さ

漁師って汚い・キツイ・怖いってイメージがあるかもしれないし、基本的に危なくもあるんですけど、魚や釣りが好きな人にとってはいいと思います。

本船の仕事という訳ではないですけど、水中灯を出してる最中に魚釣りが出来たりするし、魚種確認でどんな魚がいるかって見たりもするので。

魚って魚群探知機やソナーで探すんですけど、宝探しみたいな感じで、そういうのが好きな人にとっては面白いと思います。


装置や「去年はここでどれくらい獲れたか」というようなデータ、そして勘で魚を探すんです。

「前の日ここで獲れたから行ってみよう」とか「昨日より東に行ってみよう」とかを漁労長が指示して向かう感じですね。

無線や携帯電話を駆使して、どこで何をしているかを確認しながら移動します。
混線などで何言っているのか分からないこともありますが(笑)

小型まき網船団は陸地から3マイル(海上の1マイルは1,852m)離れないと操業できません。
だからといって水深が深すぎても漁はできないんです。

網の長さが足りなくなってしまうので、深くても水深140mくらいまででしか釣れません。
だからといって網を長くし過ぎることもできないんです、船の積載量を超えてしまうので。
そうなるとこの近辺だと漁場は限られてきます。

漁場に関しては他の船団とのスピード勝負だったり心理戦的な部分もあるんですが、分け合いの精神もあって。
船団同士で「ここ反応良いよ」とか「ここには何がいるよ」とか教え合うこともあります。


大変なことも危ないことも

大変なことはありすぎて…。
夜に家にいないので。うちは子どもも奥さんもいて、自分も家族が心配だし家族も自分のことを心配するし。

あとは海の上なのですることがないんです。
基本的には操業以外の時間は寝てるんですけど、待機時間がとにかく長いです。

揺れもありますし、船酔いしやすい人からすればしんどいと思います。
ちなみに自分は高校生まで乗り物酔いしやすかったんですけど、漁船では全く酔わないです。

船はひっくり返らないようにはなっているので結構安心して乗っていますが、危険なことも多いですね。
船上にあるものは大体危ないし、足場も悪いし不安定だし。

漁の網を回収する時って、上から吊ってローラーに通して、更にクレーンで吊るして降りてきたものを3~4人で畳んでいくんです。

網を回収するのだけでも6人くらいは必要なんですけど。
その降りてくる網から大きな魚が落ちてくるんです。

海底の砂利とかも混ざっていることもあるし。
10㎏くらいのブリが頭に当たったこともあります。

もちろん大怪我や感染症とかは別ですけど、基本的には休めないですし。
うち社員は23人いるんですけど、全員で漁に出ています。
シフトとかはないですね、人数がカツカツなので。

あと、最近は魚は増えているので、この先いつ減るのかびくびくしている部分もあります。
俺の考えですが、魚の増減って周期があると思うんです。

十何年前に、魚がものすごく減った時があったらしくて。
今はサバやイワシは年間獲っていい量の限度量くらい獲れるんですけど、
イワシが高級品と言われた頃もあるので。

獲り過ぎたら次の年に獲れなくなりますしね。

休日の過ごし方

休日は貴重なので趣味に費やしてます。

平日の休みは家だとひとりなので、寝たりゲームをしたり、釣りもします。
子どもと過ごすこともあります。特に長男とは趣味が同じなのでゲームも釣りも一緒にします。
子どもたちがバスケをしているので練習に付き合うこともありますね。

普段できない分家事もしますし。
1日寝ていることは少ないですね。
同僚の中には休日はずっと寝ているってタイプもいるんですけど、自分は寝ている時間が勿体ないって思っちゃうので。

お子さんと巨大イカ

島のここが好き

自分は人見知りなので、島だと知り合いがほとんどなので過ごしやすいですね。

やっぱり海が好きなのですぐ好きなことができるのも大きいです。
島だとどこでも泳げますし。

この島に来るのって自然が理由の人が多いですよね。
「離島に住んでみたかった」という理由でうちの船団に来た人もいますし。

「田舎」っていうのは「しゃあない」と思って住んでいます。
田舎って分かって住んでいるので、求めることはあまりないです。

西ノ島での思い出

子どもの頃はお小遣い稼ぎも兼ねて、イカ寄せの浜でドウタリイカを獲ったり、夏には外浜海水浴場で泳いでいました。

あと中学生になると精霊船(シャーラ船)を作らなくちゃいけなくて。
8/1から8/14まで、9時から18時まで作業していました。
ほぼ仕事ですよね(笑)

今はほぼ大人たちが作っていると思うんですけど、自分らの頃は枠組みだけ大人が作ってあとは全部子どもでやっていたんです。
今より子どもの数も多かったですし。

山に探検に行ったり秘密基地を作ったりも。
自転車でそこらじゅう走り回っていましたね。

あとは本当に釣りばっかりしていました
飲み物やお菓子、調味料などを友達同士で持ち寄って、釣った魚をその場で食べたりもしていました。

魚釣りや素潜りは父親やおじから教わり、小学校低学年からやっていたので海に慣れていて泳げたし、危ない場所なども分かってはいたので。

釣りに行って、あまりにも帰ってこないので携帯電話を持たされるくらいでしたね。

どんな町であってほしい?

島に変わってほしいとかいう願望はなくて

自分が子どもの時は小学校が3つあって、近い地区の友達としか遊んでいなかったんですけど、今は小学校が1つになったのもあって、子どもの遊ぶ範囲も増えたと思います。

そういう面で垣根がなくなったのはいいなと思います。

子どもにとっていい環境であってほしいですね。

記事を読んでくださる方へメッセージ

西ノ島に限らず、離島は便利さを求めては来ちゃいけないのと、
外から来た人は初めはどうしてもよそ者ということにはなるので…。

でも知り合って仲良くなればおすそ分けとかもしてくれます。
話しかけてもらわないと島の人からは中々話さないので、ぜひ話しかけてほしいですね。

漁師という仕事は説明が難しいので、興味があればまず一度体験に来てみてほしいです。

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西ノ島の漁師という仕事に興味を持たれた方、ぜひ下記ページもご覧ください。

Iターンで漁師になられた方のインタビューはこちらから↓↓

※本文中写真の一部は西ノ島役場・産業振興課よりお借りしました。

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