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隠岐の海で働く。夢とこだわりが詰まった船が、今日も島に人を呼ぶ。

『都会に出てみたかった。でもやっぱり、この島の海が一番だった。』
大学を辞めてまで島に戻りたいと思った理由とは?

「Humans of Nishinoshima」
島根県、隠岐諸島の小さな島「西ノ島」で暮らす人のインタビュー記事。
島の人ってどんな暮らしをしているの?どんな仕事をしているの?
そんな島暮らしの日常をお伝えしています。

今回お話を伺ったのは、西ノ島で渡船業を営む『松尾丸』の松尾翔平さん。
多くの時間を海で過ごす、島での生活について伺いました。


隠岐の海

仕事は、磯釣りのお客様を釣り場まで送る渡船業。
もともと父親がやっていて、一緒にやり始めた感じ。

磯釣りは、せり出した岩場でやる釣りのことで、狙える魚種も多いし、サイズも大きい。
特に隠岐はいいものが釣れるんだよね。
マダイを釣るなら全国で見ても隠岐が1番良いんじゃないかなと思うくらい。
ヒラメとヒラマサの日本記録は松尾丸から出ているしね。

海が穏やかな凪のときは、毎日のように船を出してる。
平日だったら20人くらい、休日は2隻出して60人くらい乗せることもある。

お客様は山陰や関西方面からの方が多いけど、遠いところだと仙台からも。
隠岐の海はすごいって話を聞いて、来てくれるようになったみたい。
ありがたいことだよね。

海と釣りが好きだから

小さい頃から釣りが好きだった。
父親に教えてもらって5歳くらいからやってたかな。

学校から帰ってきたら、友達と遊ばずに毎日釣りばっかり。
いつも宿題をしないから怒られてた(笑)

それくらい好きだったんだよね。

中学校まで島にいて、高校は松江市の学校に通った。
バレーボールを頑張っていたから、それが強い学校に行きたくて。

それから都会に出てみたかったのもあって、大学は神戸に。

都会は遊ぶところがいっぱいあるけど、やっぱり海が好きで、釣りが好きだから、神戸でも結局釣りをして遊んでた。

だから、すぐに都会の生活に飽きてしまった。

夏に大学の友達を島に連れて帰ったら、やっぱり景色もいいし、綺麗な海で泳げるし、いいなって思って。
それで島に帰りたくなってしまって、2年生の途中で大学を辞めた。

そのあと神戸で引っ越しの仕事したり、松江で大手企業に勤めたり。

でも父親が渡船業やっているのを見ていたし、やっぱり自分で商売がしたくて。
2016年に自分の船を買って、父親と一緒にやり始めた。

隠岐の海で働く

時期にもよるけど、魚は夜に釣れることが多い。
だからお客様は、テントを張ったり寝袋をひいたりして、磯で泊まる。

朝4時に島根県の七類港を出て、次の日の朝10時くらいまで釣りしてるよ。

自分は大体深夜の2時半に起きて、七類港に向かう。
そこから当日来る方、前日泊まっていた方、日帰りの方に合わせて隠岐と七類港を3往復。
片道1時間半から2時間くらいの距離だね。
それで22時に寝て、また2時半に起きるの繰り返し。

仕事をしていて一番大変なのは、天候に左右されるところかな。
磯は危険だから、海が急に荒れてきたりしたら迎えに行かないといけない。
だから常に天気予報を確認してるし、雲の動きもずっと見てる。

自然相手の仕事だし、人の命を預かる仕事だから大変だけど、やっぱり隠岐は環境がいいんだよね。
魚もいいものが釣れるし、釣りだけじゃなくて景色を見てみんな楽しんでる。
釣れなくても景色が綺麗だからいいや、みたいな。

すごくいいところで商売できてるなって思う。

島での暮らし

自分の仕事は、春と秋で1年分稼ぐ商売だから、夏は90日くらい休む。
夏は暑いから熱中症も怖いし、釣りをする人が少ないんだよね。
だから、休みは趣味でイカ釣りをしたり、海に潜ったり、家族で旅行したり。

今、小学4年生、2年生、1年生と1歳の4人子どもがいるんだけど、たまに一緒に釣りに行くよ。

暮らしてて思うのは、西ノ島の人はみんな温かい。
今日も船のペンキ塗りをしてたら、お茶を差し入れしてくれたり。
みんなが気にかけてくれる。

子どもが保育園くらいだったときかな。
家から抜け出していなくなったときがあって。
家族みんなで探し回って、海とかも行ったりしたんだけど、漁協の方が「子どもが図書館の前の公園で遊んでるから迎えに来て」って連絡をくれた。
そのときすごく感謝したのを覚えてる。

島にいると、人の話をしていても「〇〇の同級生」とか「○○の父親」とか、大体どこかで知ってる人と繋がってくる。
もうみんな親戚みたいなものだよね(笑)

自分の船で人を呼ぶ

これからやりたいことは、自分の思い通りの船を作ること。
今ある船よりも、大きい船を作ろうと思ってるんだ。
大きくて速くて、海が荒れてる時化(しけ)の中でも走りやすい船。

船って一般的な家を建てるよりもお金がかかるけど、良いものにはお金をかけたい。

それでもっとたくさんの人が隠岐に来てくれたら嬉しいよね。

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